夜のハノイその2「お金のため」
Thạch lam(タックラム)のルポ「夜のハノイ」その2。
夜のハノイその2「お金のため」
ぼくは、白いターバンを巻いた17か18歳の女の子を見た。アーモンドの形の整った顔に、煌めく目で、恥ずかしがり屋で、愛らしくて。あの子が、やり手婆のハイさんの家にやってくるというのか?お金のために一時を過ごすというのか。あどけなく清純なあの子が?
ぼくは、先輩のカンさんといっしょに、やり手婆のハイさんを訪ねた。重苦しい気持だった。あのビンロウ売りの娘のきれいな心を思って。でも、一方ではこの願いがかなうようにと願って。
ハイ婆さんの家に入ると、彼女はキンマを巻きながら言った。
「お二方は、どの子がいいですかね」
カンさんは笑って答えた。
「どの子もきれいでかわいいよ」「でも、この人は、白いターバンのビンロウ売りの女の子が好みなのさ」
ハイ婆は、はじめはむずかしいし時間がかかると渋っていたが、カンさんが充分にお金を払うと約束すると、あたふたと服を着て、さっそく市場に出かけて行った。