夜のハノイその3「ある婦人」

Thạch lam(タックラム)のルポ「夜のハノイ」その3。
夜のハノイその3「ある婦人」
1時間ばかりやり手婆のハイさんを待った。ビンロウ売りの彼女は本当に来るんだろうか?求める金は高いのだろうか?
「高いは高いだろうが、シン君が1日机の前に座って稼げば、できる金じゃないか」。
カンさんが「もう少し待ってみよう」と言った時、ハイ婆さんを訪ねて来た婦人が入ってきた。とても上品な服を着て。いったい何のために?
「ハイさんは出かけているんです」「もうすぐ戻るから待っていてはいかがですか」とうながすと、婦人はためらいがちに、縁台の端に腰掛けた。
ぼくはカンさんに「彼女を知っているのかい」を小さな声で話しかけた。
「事務官のTHさんの奥さんじゃないか」
ぼくは感電したように驚いた。「あの子どももいる、おとなしいTHさんの奥さん…」
カンさんは肩をすくめて言った。「そうさ。奥さんは博打が好きで、財産を使ってしまって、今はこうしているのさ」
やがて、婦人は居心地が悪くなったように、帰ってしまい、さらに15分ほどたって、ハイ婆さんが若い男を連れて戻ってきた。その後ろに、いじらしく清純な白いターバンの彼女を連れて。
男はささやいた。「よく言って聞かせましたよ。ずっとぐずぐず言ってましたが、1回5ドンでOKですよ」…