戦前のハノイと日本人記者その1

大屋久寿雄著、鳥居英晴編集の「戦争巡歴」(柘植書房新社)を読みました。
戦争前後の随筆を編集して出版するのは、本当に意義がありますね。

大野久寿雄は、戦前のハノイに1人特派員として派遣された記者で、
「戦争巡歴」は戦後に派遣生活の経験をまとめた随筆のようです。

毎日の生活では、ハノイの日本人と、カムティエンの女の子と
まれにフランス人の警察や記者などの話がでてきます。
ベトナム人にはまったくインタビューしていないので
非常に残念ですが、当時はこれでもよかったんですかね~~。

1つおもしろかったのが、彼がフランス人に尋問されたときに
ベトナム人の老通詞が、まずいところだけをとばして通訳してくれる所です。
当時のベトナム人的には、問題を避けるのが消極的防衛策だったのでしょうね。

次におもしろいのが、カムティエンに家を持っている姉妹とのやりとり。
お姉さんのラム嬢は有望そうな男性次々にキープする策士、
まだ無邪気な妹ナムちゃんは、彼の恋人になって妊娠しますが、
彼が帰国してしまい、田舎に帰ってしまいます。
現代なら、訴訟で認知をせまり、日本に来て働くという手もあるのですが。

あと、彼の随筆は人の美醜や加齢については容赦なく
第一印象で人を理想化したり、価値下げするのが激しいです。
当時は格差社会だからで、外見の差が大きいのでしょうか?
それとも性格?
正直に書いてくれて、すごくおもしろいのですけど、
関係者が存命中は文句が出たでしょうね。