ベトナムの新しい女? 小説「断絶」
ベトナム文学 1930年代の問題作 ;
ニャット・リン作 断絶(đoạn tuyệt)を読みました。
訳者は竹内与之助先生です。
■あらすじ
舞台は当時(1930年代はじめ)のベトナム ハノイです。
1 当時では教育を受け教養のある女性ロアンは、同級生だった
ズンを愛しています。ズンもまたロアンを愛していますが、
ロアンには親の決めた結婚相手がいるために
ロアンと少し距離を取っています。
ズンは色々な活動をしているらしく、親からは勘当状態です。
2 ロアンはあきらめて、ハノイ近郊の村の裕福な家に
嫁に行きますが、夫や姑とうまくいきません。
当時は裕福な家は妻を数人持つのが普通だったので
ロアンの嫁ぎ先にも、2番目の妻が同居するようになります。
3 ある夜、読書のことで夫とけんかになり、姑にののしられ、
夫に花びんで殴りかかられてロアンは、もっていたペーパーナイフで
夫の胸を刺してしまいます。ロアンは捕まり、裁判では
このような嫁は死刑にすべきという世論と
過失であってロアンは悪くないという世論が2つに分かれます。
ここで作者は弁護士と検事にそれぞれの意見を代弁させています。
4 最後
ロアンは釈放され、ズンからの愛の手紙をもらうところで
小説は終わります。ハッピーエンドです。
■妻妾同居は普通
古都フエなどは特に妻妾同居は普通だったそうです。
戦争の影響で現代でも同居する人がいるそうです。
理由から考えると
・乳幼児死亡率と出産時の女性死亡率の高さから、妻子が複数欲しい
・妻子の生活の維持のため
・家事をする人が複数欲しい
などがあるのでしょうが、
それもだんだん形骸化して、富の象徴になってしまったのかもしれません。
ロアンも作中で「いらっ」としていますが
これでは、だんなさんが刺されてもしかたないかな~
死んじゃうのはかわいそうですが・・・・。
だんなさんも、相手が女性で自分より体力も立場も弱いと
つい簡単に暴力をふるってしまいがちですが
よく考えてからにして欲しいものです。
■つっこみどころ
1 ペーパーナイフでだんなさんが死んじゃうの?
どんなに、じょうぶなペーパーナイフかと思いますが
まだプラスティック製はないだろうし
ここは、つっこまないことにします。
2 ロアンはいやなのになぜ結婚しちゃったの?
いっそ、「いやだ」と言って結婚しなければいいのにと思いますが
生活もしなくてはならいないし、うまくいくかもしれないし
両親がすすめるし、尼になって苦労するのは嫌だし
ってことですかね・・・
何はともあれ、たいへんおすすめの小説です。
■本の概要
「断絶」ニャット・リン作 竹内与之助訳 大学書林 ベトナム語対訳
本の紹介