戦場の夫を待つ「征婦吟曲」を読みました
ベトナムで昔から読み歌い継がれてきた
「征婦吟曲」(セイフギンキョク chinh phụ ngâm khúc 1710~1745位)を読みました。
1700年代前半に作られた
ダン・チャン・コン(Đặng Trần Côn 鄧陳琨)の漢詩「征婦吟」を
ベトナムの詩の形式の、七七六八体に直したものです。
(7語 7語 6語 8語と続き、決まった所で韻を踏む)
当時の女流詩人 ダム・ティ・ディエム(Đoàn Thị Điểm 段氏點 1705-1748)が
チュノムに訳したと言われています。
(やー名前を書くとき、漢字-読み-ベトナム語とあるから大変)
訳者は竹内与之助先生です。
■あらすじ
というか残された妻が書く詩の形ですが
1 結婚したばかりの夫が出征します。
妻は国のため武功を立てることを祈ります。
2 夫からは定期的に手紙が来ますが
今度帰るという約束は何度もやぶられ
帰宅しないまま時が過ぎていきます。
3 両親は年を取り、門に立って息子の帰りを待ちわびます。
幼子はやんちゃで世話が必要です。
妻は、両親に食事を食べさせ、夫のかわりに子どもに勉強を教えます。
4 やがて、夫からの便りは途絶え
妻は化粧をしなくなり、悲しみと生活の困苦の中で
容色の衰えた自分を嘆きます。
5 いつか帰ってきたら、夫がこの詩を読んで
理解してくれるだろうと、はかない期待を込めて終わります。
(夫はきっと戦死してしまったのでしょう)
■戦争を重ねてきたベトナム人女性の心
ベトナムは最近まで戦争の時代が続き、
出征するのは若い男性であるため
多くの女性が若くして寡婦となり、
また結婚のチャンスを逃し
多くの両親が息子や孫を失いました。
征婦吟曲は絵空事でなく、本当の自分たちの気持ちなのだろうと思います。
■昔はホームスクールだった!
ベトナムには、昔、塾がたくさんあったそうですが
そして今も学校は学費が有料ですが
家で親の元で勉強するホームスクールも普通だったんですね~。
最近はアメリカや日本でもホームスクールも見直されていますよね。
■つっこみどころ
今回はつっこみ所はあまりありません。
始めは武功を祈りながら、年月の流れに沿って
生活のことや、季節の移り帰りを描き、
時がたち、とにかく帰ってきて欲しいと願ったり
あきらめきれなかったり、あきらめたりたりする、
美しく悲しい詩です。
本当に自分がこんな境遇なら、
つらすぎてちょっと読めないかもしれません。
1 再婚してもいいじゃん
でも一点だけあるとすると
夫が帰って来ないなら、妻が再婚したければ
再婚させてあげてもいいんじゃないかなあと思います。
この辺は有名な映画「10月になれば」の所でくわしく紹介します。
とにかくたいへんおすすめの詩です。
■本の概要
「征婦吟曲」竹内与之助訳 大学書林
ベトナム語、日本語、チュノム、漢文対訳
本の紹介
Phòng GD&ĐT Hải Lăng オンライン図書館による紹介(右上の絵も)