コミカルでリリカル 少女娼婦を描くルポ「夜のハノイ」

夜のハノイ Hà Nội ban đêm 1936
ルポルタージュ ハノイの娼婦

Việt Sinh(ビェットシン)・Tràng Khanh(チャンカン)
夜のハノイはThạch lam(タックラム)が雑誌記事を書くときに使ったViệt Sinh(ビェットシン)名で書いたルポルタージュです。標題の通り、ハノイで娼婦をする女の子の生活を描いていますが、観察力が鋭く、リリカルで、読んでいてさわやかな感じさえしてしまう記事です。
目次は
1.はじめに 2.お金のため 3.1人の女性 と続きます。
あらすじだけでは文体が伝わらないとは思いますが、本日は1のはじめにを紹介します。ナム嬢の手練手管がコミカルでもあります。
夜のハノイ その1 ナム嬢の物語
 ナム嬢はD通りに住む愛くるしい女の子だ。いつでも小さな家のドアから通りへ出たり入ったり、かわいい姿を見せている。貧しい家には年老いた父母と妹弟たちがいて、銀細工の仕事をしているけれど、細工が売れているのを見たことがない。
 ある時、自分の美しさを知った彼女は、もっと優雅に暮らす方法を見つけた。彼女は戸口で行く男たちにほほえむ。男は、彼女に声をかけずにいられなくなる。そして声をかけると、彼女は怒ったように「自分は身持ちが悪い娘ではない」と言う。やがて男が家の中に入ると、彼女の長い身の上話が始まる。
 また男がいやらしいことを言うと、彼女は「私といたいなら、きちんと仲人に申し込んでもらわないと家族が怒る」となじる。恐縮した男は「あなたを助けたいだけ」と言って5ドン(ほかの小説の教師の給与が数ドン)を彼女に貸すはめになる。
 さらに夜が更け、結局、男が願ったとおりになった次の朝、ナム嬢は「本当にこんなこと初めてなの」と恥ずかしそうに言う。ナム嬢がそういうたびに、男たちはお金を失っていく。
夜のハノイ Hà Nội ban đêm 1936
ルポルタージュ ハノイの娼婦
Việt Sinh(ビェットシン)・Tràng Khanh(チャンカン
写真はwiki