1920年代のベストセラー悲恋物語「トータム」

大学書林からでている、日越対訳小説
ホアン・ゴック・ファィックの
大ベストセラー小説「トータム」を読みました。
訳者は竹内与之助先生です。
(片仮名表記は発音に合わせて書いています)
■あらすじ
D.T.(ダム・トゥイ)は、美しく教養のある少女
T.T.(トータム 本名はLAN)を愛し、彼女もまた
トゥイを愛しています。
2人は弟をだしにして、西湖のほとりを散策したり
いっしょに海辺に行ったりして、プラトニックな愛情を深めます。
トータムに結婚の話が持ち上がり
トゥイはつらいのをこらえて結婚を進めます。
トータムの母は重病になり、母のためにトータムも
結婚を受け入れます。
トゥイは結婚したトータムに愛情と憎しみを感じます。
そして、結婚後すぐトータムは死んでしまいます。
■小説の中の町
1 西湖散策
2人が結婚する前に別れの逢瀬をする、
悲しく美しい場面の場所です。

大きな地図で見る
đường Ô (河口通り) 
Đường Cổ Ngư (西湖のほとり)
Hồ Trúc Bạch チュックバック湖(西湖の一部)
Yên Phụ(イエンフ)
チュックバック湖、西湖とコーグー道(みち)
写真も上記ホームページ
Duong-Co-Ngu 
2 ドーソンの海岸
 ハイフォンのすぐ南の海浜リゾート地
 2人はそれぞれ親戚と友だちの家に泊まって過ごします。

大きな地図で見る
■詩を書く少女
才能あるトータムは、トゥイの詩を即興で直したり
彼に詩を送ったりします。
次の詩は、結婚前に西湖のほとりイエンフの
河口通り(Ô Yên Phụ)で最後にあった時に
書いた詩です。
 誰かさんにこの花を送ります
 花よ、今日この日を忘れないでおくれ
 空高くひらひらと雲が飛んでいる
 そばの西湖がその人の心を照らしている
■つっこみどころ
1 結婚して幸せになっちゃいけないの?
 日本にも当時は「金色夜叉」など、若者が
 彼女を金持ちの彼に取られてしまって、
 苦しみ憎むが、結局彼女は死んだり不幸せになるという
 小説が多いです。やはり結婚して幸せになられたりしては
 小説にならないと言うことでしょうか?
2 なぜ、望まぬ結婚をするか? 早婚と晩婚
 その理由を考えてみました。 
 1 生活の安定、経済的利益のため
 2 家族がすすめるから
 3 今の恋人は貧乏だから
 結婚が就職だと思えば、しかたないですが
 やはり背景となっている理由は「早婚」のためと思われます。
 晩婚であれば自分に経済力もあり、相手を選べますしね
 反対に相手がいなくなる(就職先がなくなる)というリスクもありますが
何はともあれ、たいへんおすすめの小説です。
■本の概要
「ト・タム」(Tố Tâm 1925)
本の紹介